命に関わる非常用電源をどう守るかについて
今回は「過去のニュースから読み解く非常用発電機の負荷試験の重要性シリーズ」第2弾です。
命に関わる非常用電源をどう守るかについて考えていきましょう。
2018年6月18日、最大震度6弱の揺れが大阪の街を襲いました。後に大阪府北部地震と言われるこの地震は6人が死亡462人が負傷した他、6万棟を超える住宅が被害を受けました。
吹田市にある国立循環器病研究センターは地震の影響で停電が発生しました。非常用発電機は作動しましたが、その後通常の電源に戻る際に不具合があり電気が止まってしまいます。そのため重症の患者ら40人を別の病院に搬送する事態となりました。
非常用発電機は法律で年1回の点検が定められていますが、同センターは地震発生までの少なくとも5年間点検を実施していないことがわかりました。
地震から3年が経ち、点検が徹底されているか確認のため国立病院機構大阪医療センターが取材を受けています。同病院は災害時に多くの重傷者を受け入れる災害拠点病院です。
この病院では月に1回非常用発電機を作動する点検を行っていましたが、地震後には点検ルールをさらに厳しくしました。年に1回通常の電源と非常用発電機とを切り替え、電気が病院全体に行き渡るかテストします。不具合があった場合は患者の生命に関わるため、医療機器用のバッテリーを確保するなどの準備も行っています。
国立病院機構大阪医療センターの担当者は言います。
「(点検作業が)停電を伴うということになると医療機器が動いてますので、現場の方は不安視されます。そういうことを聞きますと点検する側としても少し二の足を踏んでしまう、慎重になってしまうというところはあります。」
非常用発電機の点検は病院側の負担が大きいと考えられます。2020年に行われた調査では驚きの事実が明らかになりました。
点検の啓発活動を行っている消防管理協会によりますと、大阪市内の病院や高齢者施設471施設のうちおよそ6割にあたる275施設で非常用発電機の点検が行われていませんでした。災害が起きているのにもかかわらずそれを活かせていない状態です。
点検をしていない病院を取材するとその背景が見えてきました。
・点検をするときには停電させる必要があり、薬を補完する冷蔵庫や空調も止まる。
・停電を避けるためのバッテリーを準備すると費用がかさむ。
・今の点検が不十分だとしても消防署から強く言われない限りは変えるつもりはない。
費用面での負担の他、病院の点検について消防の確認や指導が十分ではないことが浮かび上がりました。
点検を行っている大阪医療センターでも建物の老朽化という課題に直面しています。
「老朽化しているほど(点検に)手間と技術がかかって費用もどんどん上っていく。(年に1回の大きな点検の費用は)2000~3000万円かかります。行政などから点検に対する補助があったら非常に助かります。」
防災行政に詳しい専門家は自治体が補助金制度をつくるとともに消防による積極的な指導を行うべきだと指摘します。非常用発電機は災害時の生命線となります。被害を最小限に抑えるために普段から点検の徹底が求められています。
点検作業が費用面で重い負担になっていたり消防の指導が十分行き渡っていない面もあるということがわかりました。補助金制度の検討や点検方法の見直しなどを行い、全病院で点検を徹底して全体の割合を上げていくことが急務だと思います。
ただ、このニュースは2021年6月のものであり、その後データが改善されている可能性はあります。
費用面での相談や各施設にあった適切な点検方法など、ぜひダーウィンにご相談ください。責任を持って対応いたします。
動画のコメント欄では「模擬負荷試験でいいのでは」という意見も見受けられました。たしかに負荷試験には「実負荷試験」と「模擬負荷試験」があります。模擬負荷試験は施設の停電は不要で、小規模に実施できるのがメリットです。
病院は平時はもとより、災害時に重要な役割を担います。安定した電源供給を守ることが命を守ることに直結することを忘れてはいけないと思いました。